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季刊誌「せおと」-fileNo.42-上品。下品。「品」ってなんだか知っていますか?

fileNo.42上品。下品。「品」ってなんだか知っていますか?

『人間からの進化』 師走1日夕刻、テレビのニュース番組を聴いて「ん!」という感じの言葉に会った。言葉だけ書けば『品(ひん)』なのだけれど、経緯(いきさつ)はこうである。

11月24日シリアとトルコの国境近くでロシア軍機をトルコの戦闘機が撃墜した。この地域の紛争は非常に複雑で、シリア国内はアサド大統領率いる体制派と反体制派、それに過激派組織『イスラム国』とが入り乱れて争っているらしい。それに加えてトルコはアサド政権に退陣を要求、ロシアはそのアサド政権を全面支援するなど両国が対立しているところにこの撃墜事件である。

トルコ側はロシア軍機の領空侵犯によるもので正当な防衛行為を主張、一方ロシアのプーチン大統領は領空侵犯を否定した上でトルコに謝罪と補償を要求するなど非難の応酬が続いていた。

ところが30日になってプーチン大統領がトルコ軍の撃墜動機について、トルコは過激派組織『イスラム国』支配領域から大量の石油を密輸しており、輸送経路がロシア軍に破壊されないよう守るためだったという見方を示した。これに対してトルコのエルドアン大統領が猛然(?)と反発「我々はテロ組織から石油を買うほど品が悪くない。(事実と)証明されれば私はこの職にとどまっていられない。お前さん(プーチン大統領)もその覚悟があるのか。」と毒づいた。

このテレビアナウンスの『品』に反応して冒頭の「ん!」になったのであるが一国の、それも外国の大統領の「品が悪くない」発言に少々驚いたし、国際紛争の場に品が登場したことに興味が湧いたのである。

日常生活の場で品が登場するのはそれほど珍しいことではない。あの人は品があるとかないとか、気品とか品格とか人格的価値表現に多く用いられる。もちろん品質がいいなどと物の価値にもつかわれる。

現代のつかわれ方と少々違うようだけど、二千年前に書かれた仏典にも品は登場する。浄土三部経の一つ「仏説

観無量寿経(ぶっせつかんむりょうじゅきょう)」の中に人を九つに区分して表現したところがあって書き並べると上品上生(じょうばんじょうしょう)、上品中生、上品小生、中品上生、中品中生(ちゅうばんちゅうしょう)、中品下生、下品上生、下品中生、下品下生(げばんげしょう)である。門閥家柄で分けたものではなく仏道修行の内容・程度、取り組む姿勢などによる分類と考えられる。品(ぼん)は修めるべき内容、生は機根(素質・根気)であろうか。

そもそも仏教とは何かと問えば仏(ほとけ)の教えであり、仏に成る教えである。神さまの宗教と違うのがこの「仏に成る」部分である。神さまは人に向って神に成れとは言われない。どこまでも神は神であり人は人である。ところが仏教では仏になれと説く。説くと言うことは人間には仏になれる素地があることを意味する。仏になることを成仏あるいは往生、滅度(めつど)、解脱(げだつ)などと宗派によって表現が異なる。

ここまで書くと仏とは何か、何故に仏をめざすのかと問われそうである。仏はインドの古語サンスクリット語のブツダの訳で覚者(かくしゃ)[真理にめざめた人]との意味という。前出の成仏も往生も解脱も人が覚者になることである。人が本当の人になると言ってもいいと思うが理想の人間像ではない。人間が人間であって人間に縛られない時が覚(さと)りの姿である、という表現もある。その覚者になる道筋としての区分が上品上生から下品下生と考えられる。上品上生の人は自力で下品下生の人は他力(阿弥陀仏の本願力)によってということであろう。

なぜ仏をめざすのか。これは人間の性としかいいようがない。キリスト教の教えに「人はパンのみに生きるにあらず」とあるが、まさにこのことである。人は物質的な満足に止(とど)まっておれず、より真なるものを求め求めて止(や)まない存在である。かなり以前真宗の布教使から「人間からの進化」という話を聴いたことがある。人は人から仏人(ぶつじん)[フランス人ではない]へ進化する。人類は今その途上にあるが仏人第一号は2500年前に生れたお釈迦さま(世界第一級の人格者・覚者である)だと。当時はなんとまあ突拍子もない話だと思ったけれど、今の世界情勢とくに中東地域の殺し合い憎しみ合う惨澹(さんたん)たる人間のありさまを見るにつけても「覚者(仏人)よ殖(ふ)えろ!」と喚びたくなる。

元日の 山を見てゐる 机かな   あきら  

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