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季刊誌「せおと」-fileNo.80-何の為に生れてきたか、何の為に生きるか、何をして生きるか

fileNo.80何の為に生れてきたか、何の為に生きるか、何をして生きるか

【令和の米騒動[そど]】 米は稲作が始まって以来日本人の主食で手に入りにくくなると人はどこか殺気立つ気配がある。歴史でんだ大正7年の富山発の米騒動がいい例で主婦達から始まっている。

6月1日の地元紙に「備蓄米 店頭販売始まる」の見出し記事があった。都市部の大手スーパーでの販売で5キロ 2,160円が即完売であったらしい。前夜のテレビニュースでも行列ができたと報じていた。

その記事の隣りに小さく「野村元農水相が小泉氏に苦言」とあり自民党農林部会にも諮[はか]らず新農水相が勝手に随意契約で備蓄米を売り出したとの不満らしい。

昨年(令和六年)夏頃に始まった令和の米騒動は治まる気配がない。米価の高騰が続き備蓄米を放出する中で江藤前農水相が「私は米を買ったことがない」発言で更迭され小泉新大臣が登塲して見世場を演じている。

野次馬的にみれば江藤前大臣は生産者目線であり小泉新大臣は消費者感覚で米価を安定させたい思惑である。

ここまで筆をすすめて、そういえば昔「貧乏人は麦を食え」発言でクビになった大臣がいたなあ、と検索すると昭和25年当時の池田勇人大蔵大臣(後総理)だったらしい。今や大蔵大臣なんて職名は無いのだと気がつく(笑)。今年は昭和100年とやらで昭和は遠くなりにけりである。

米は稲作が始まって以来日本人の主食で手に入りにくくなると人はどこか殺気立つ気配がある。歴史で学んだ大正7年の富山発の米騒動がいい例で主婦達から始まっている。

私は昭和24年の小学校入学であるがあの頃は大戦後の食料不足と相まって米飯[こめんめし]の食事にありつけるのは葬儀の時だけで近隣で葬式があるとうれしいものであった(笑)。いつもは少しの米飯の上に山ほどのカライモが盛られていた。

米の歴史を紐解[ひもと]くと、と言っても弥生時代までは遡[さかのぼ]らないが年貢米が中世(鎌倉時代から安土桃山時代)に登場し農民は割り当てられた土地に応じて租税として領主へ納入する制度ができあがる。その年貢米を領主が販売することで米問屋なるものができ流通も発展してきたと歴史で学ぶ。

中世から近世へ変わる頃の時代劇によく「隠[かく]し田[だ]」(租税のがれの田)が登場するが封建領主と農民集団とのかけ引きはおもしろい。豊臣政権の太閤検地は領主による隠し田潰しの一面である。

明治以降納税は貨幣に変わるので年貢米は消滅する(小作米は残る)。ここで米はただの流通商品化してもよかったような気もするが、そうはならず時々政治の表舞台に出て世を騒がす。

NHKの朝ドラ「あんぱん」は今(六月中旬)太平洋戦争(第二次世界大戦)の真っ只中を背景として進行しているが、この頃の米はどのような状況にあったのだろうか。

昭和17年成立の「米の供出制」というのは農家が生産した米を生産者の自家消費分を除いて政府が一定の価格で強制的に買い上げたのである。戦争中の食糧確保のためであったが戦後の昭和30年まで続いている。

ついでにもう一つ記しておきたいことがある。結婚した昭和44年には米穀配給通帳なるものが現存していた。これも戦争中の食糧管理を目的に始まったもので戦後も米の配給を公平に行うため昭和57年まで続いたのである。この通帳は農林省が発行し市町村が職務代行した。世帯単位の発行で世帯主の住所、氏名、世帯人数、配給年月日、一月当りの割当数等が記載されていた。婚姻届を提出するとこの手帳が発行されたのである。

朝ドラの話題に戻ると主人公「やなせたかし」の伯父(医師)が「何の為に生れてきたか、何の為に生きるか、何をして生きるか」と語る部分があって大いに興味深い。いつの時代でも自分がここに在[あ]ることは人生の一大関心事である。

「食うために生きるか、生きるために食うか」と哲学者は言い、ドラマあんぱんのヤムさん(流れ者のパン職人)は空腹ほど辛いものはないと過去の悪事を吐露する。         

仏教では人は「仏に成る」ために生れてきたと説く。重ねて「仏」とは「本当の自分」だという。本当の自分とは何か。

道元禅師は「仏道をならふといふは自己をならふなり。自己をならふといふは自己をわするるなり。」と説く。自己をならうとは自己を知るだけでなく自己を「作る」ことだという。単なる自分探しではない。

「本当の自分」になるために自分を磨き育てていく、つまり「仏に成っていく」その道のりが人生なのかもしれない。   

  

山荘や 霧また襲ふ 濃紫陽花 あきら  

令和7年夏季号より

           

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