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季刊誌「せおと」-fileNo.46-柿は熟して落ちる前が一番旨い? のかもしれない。ひとも・・・?

fileNo.46柿は熟して落ちる前が一番旨い? のかもしれない。ひとも・・・?

『秋の京都』 十一月中旬、京都へ2泊3日の旅をした。目的は本山(西本願寺)への団体参拝である。寺の団体であるから日頃顔をつき合せている門信徒や住職等々総勢30名強で口達者が多く賑やかだ。空港から旅行会社の添乗員さん(60代女性)も同行したので気楽である。鹿児島も京都も天気は上々であった。

今回は伝灯奉告法要(でんとうほうこくほうよう)と名づけられた門主(もんしゅ/一般寺院の住職)の交代に伴う法要である。2年間かけて十期80日80座行うというから組織が大きいとやることが大掛りで派手だ。

午後1時すぎから二つのお堂(阿弥陀堂・御影堂)への入堂が始まったが全国各地から相当な人集(ひとだか)りである。参拝は午後の半日で終了する。さあこれからが本番である。

宿は京都駅近くのリーガロイヤルホテル京都に連泊である。この時節この一流(?)のホテルを確保するのはなかなか難しいのだと我が住職はハナタカさんでドヤ顔であった。この齢で女房殿も同伴とくれば夜の京都へ繰り出す元気もなくコンビニで手に入れた焼酎五合瓶で酔い、早目の就寝となる。

二日目。快晴。丸一日観光だ。巡るところは金閣寺、竜安寺、大原三千院、銀閣寺。恥ずかしながらこの齢までどこも訪れたことない観光地だ。いい一日になる予感がした。午前9時出発のバスがホテル前で待つ。バスの乗り込み口で茶色のスーツに身を包んだ小柄なお婆さん(失礼!)が申し訳なさそうに「今日はよろしくお願いします。」とのご挨拶に「!」となったが乗り込む。その後から添乗員さんが駆け込んできて住職へ語るのが耳に入る。「すみません!予定していた若いガイドさんが急病であの人(お婆さん)が交代の人なんですって!私もながいこと添乗員していますけど、自分より年配のガイドさんに巡り合ったのは初めてです。」といささか興奮気味である。そういうことなんだって、と私は私に言った。それにしても京都のガイドさんは人手不足なのか、それとも余程の書き入れ時なのか。

時々年号や人物名に自ら訂正が入る(間違ったと言わなければ誰も気づかないのに)が、なべて説明は流暢(りゅうちょう)で年季の入ったガイドさんである。顔さえ凝視しなければ問題は無い。

金閣寺到着は10時頃であったが池に映る金閣や周りの紅葉が実に美しい。写真(プリント)を見ると上下が判らなくなる位だ。

竜安寺へ向う途中ガイドさんからこんな語りがあった。先程私の年齢を訊ねた方がいたが「私はライオン年生れなので齢は無い」と答えたという。後刻家内から聞くにAさん(60歳代女性)が金閣寺を巡りながらしつこく訊ねていたらしい。推定84歳とか、笑った。この日、ガイドさんは鹿児島ツーリストの旗を手にしていなかった。

竜安寺からしばらくすると谷川添いのそれほど広くない道となりそこを縫うように登った先の狭い盆地が大原の里であった。その昔福井の海から京都へ鯖(さば)を運んだ鯖街道にある。駐車場から三千院までかなり急な山坂で手すりをつかまえながら登る。ここは昔むかし「京都大原三千院、恋に疲れた女がひとり…」と流行歌に歌われ有名になったところでもある。六十歳過ぎた男共どもが屯(たむろ)して「京都ヨボヨボ三千院、齢に疲れた男がひとり…」と替歌をうたい自分達でうけた。苔(こけ)の美しい寺であった。この後銀閣寺へと回ったが庭園としては金閣寺より美しい気がしたが歩くのに疲れた。夜は森伊蔵一升瓶の差し入れで盛り上った。

三日目。前日と同じ時刻、同じガイドさんに迎えられて二条城へ向う。そこから嵐山へが本日のコースで日程表には嵐山散策(竹林の小径)とあった。目的地が近づくにつれ車の渋滞は激しくなり、駐車場附近からウンザリする程の人混みである。竹林へ向うが旗を持つガイドさんを見失いそうになる頃誰かの「旗持ちを替ってやれ!」の声で大きめの女性が旗持ちを交代する。とても竹林散策という趣ではなく、早々に渡月橋へ引き返したが人波の絶えることはなかった。

伊丹空港近くなってガイドさんの別れの言葉「皆さまを無事送り届けられてうれしい。次回は首をすげ替えてお会いします。」に「あたや、おまんさあが一番心配じゃった。」と野次が飛んだ。最後に「忘れな草をあなたに」を歌っててくれた。これが実にうまかった。後を受けて添乗員さんが涙を流しながら「この人は何かもっている人なんでしょうね。ガイドさんとの別れに泣いたのは初めてだ。」と語る。バスの中は泣いているのか笑っているのか判然としないどよめきに包まれた。

時季がくれば人も柿も熟して落ちる。落ちる前が一番旨いのかもしれない。思い出深く忘れ難い旅であった。

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