特別養護老人ホーム美樹園 | 社会福祉法人南陽会鹿児島 谷山 老人ホーム 特別養護老人ホーム

季刊誌「せおと」-fileNo.79-どこからか「それはあなたの人生が恵まれていたからだ」という声が聞こえる。そうかもしれない。

fileNo.79どこからか「それはあなたの人生が恵まれていたからだ」という声が聞こえる。そうかもしれない。

【いづこから いづこへ】先月の法事で住職から法話とも小咄ともつかない話を聞いた。「一週間しあわせになりたければ結婚しなさい」とくる。一週間たてば相手のアラが見えてきて後は忍耐(?)の日々ということらしい。この話を聞いた妻に「我が家は一年はもったね」と相槌を求められた。

三月に迎えられた。

例年よりおよそ1ヵ月は遅れた前庭の梅の花が散りはじめた。スモモもようやく五分咲きで青空に白が映[は]えるが白モクレンは未[いま]だ咲く気配がない。

先月の法事で住職から法話とも小咄[こばなし]ともつかない話を聞いた。時代はハッキリしないが米国はハワイ界隈[かいわい]での語り草らしい。

「一日しあわせになりたければ理髪店に行きなさい」である。

髪をカットし髭[ひげ]を当ってもらいマッサージまで加われば一日スッキリした気分で過ごせる。

次に一週間しあわせになりたければ結婚しなさい」とくる。

一週間たてば相手のアラが見えてきて後は忍耐(?)の日々ということらしい。この話を聞いた妻に「我が家は一年はもったね」と相槌[あいづち]を求められた。

我が家は結婚して五五年を超えるので日数にすると二〇、〇〇〇日超となる。つまり365日位は幸せで残り19、000日以上は忍耐だったことになる(笑)。

次は「一ヵ月しあわせになりたければ馬を飼いなさい」である。

馬に乗れば殿さま気分になれた上に人間みたいに文句も言わないのでしあわせが少しながく続くものらしい。けれど餌の世話や馬小屋の掃除などが大変なので1ヵ月でお手上げ!

次に「一年間しあわせになりたければ新しい家を建てなさい」とくる。

新しい家は気持ちがいいものであるが一年も経てば喜びも薄れてしまう。我が家は築二〇年を超えあちこち不具合が生じ始め加齢もあって維持管理に苦慮する。

最後は「一生しあわせになりたければ合掌のこころを持った人になりなさい」である。

住職が力説したかったのはここだろうと秘かに思っている(笑)。合掌のこころとはすべてのご縁に手を合わせ出遇[であ]いを敬[うやま]うことだという。

そもそもしあわせとは「幸せ」と書くが、もともと「仕合わせ」であったという。「仕」はめぐるという意味で仕合わせとは「めぐり合わせ」だと。この世はすべてめぐりあうところではないかと続く。

生れてこのかた親、兄弟(姉妹)、夫・妻、子や孫にめぐりあい、職場の先輩後輩、仲間たちとも出遇った。仕事も世界にはおよそ二万種あるらしいが今のこの職にめぐり合っているのである。

このめぐりあいを不思議なご縁と有り難く頂くか、あたり前として受け取るか、そこはそれぞれの感性であろうか。

ハワイの寓話[ぐうわ]はこの「一生しあわせになりたければ・・・」で終るけれども少々つけ加えたい。この話は「しあわせになる目」が外だけを見て内を見る目に欠ける気がする。

私と呼んでいるこの自己とはいったい何者で何故に今ここに存在するのか、の目である。

自己の立ち位置は重層的である。この日本この鹿児島に生れ出生届が提出されるのが社会内自己の誕生である。

この自己は年を重ねて亡くなると死亡届により戸籍が抹消される。この社会内自已に組織内自己が含まれる。成長して会社等で働き始めるのがそれであるが、こちらは定年退職で終る。

この二つの決定的な違いは社会内自己の出生届・死亡届は本人の意志にかかわらず行われる(笑)が組織内自己の入退は自己の意志である。

いづれにしても社会・組織から除籍されて自己は消滅する。

宗教哲学者大峯顕[あきら]は自己にはもう一つ存在場所があると説きそれを宇宙内自己と呼ぶ。

宇宙の中の自己は組織内・社会内自己と違い抹消されず消滅することもないという。

しあわせの話に戻ると親、夫(妻)、子にめぐりあえたことは喜びに違いないが自已に出遇えたことは更[さら]なる喜びではないだろうか。

どこからか「それはあなたの人生が恵まれていたからだ」という声が聞こえる。そうかもしれない。

されど人は得[え]てして自分の足りないところ無いものを数えたがる。才能がない、容姿が悪い、環境に恵まれなかった等々。

それでもなお自分(自己)がここにあることの途方もないながい歴史と存在の稀有[けう]性について語りたい。

今この地球上に八〇億もの人が存在するのに私は私だけである。

「後にも前にもこの私だけで、何万年溯[さかのぼ]っても私はいず、何万年経っても再び生れては来ないのだ」(志賀直哉「ナイルの水の一滴」)という先達もいる。

自己の存在はとてつもなく不思議で貴重で謎なのである。

散るさくら  残るさくらも 散るさくら  良寛

令和7年春季号より

お問い合わせ

ご質問やご相談、当法人に関するご質問等ございましたら以下よりお気軽にお問い合わせください。

Action Planどこからか「それはあなたの人生が恵まれていたからだ」という声が聞こえる。そうかもしれない。

最新号

アーカイブ

お問い合わせ

ご質問やご相談、当法人に関するご質問等ございましたら以下よりお気軽にお問い合わせください。