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季刊誌「せおと」-fileNo.004-生きることは、辛いことばかりだと思うときに

fileNo.004生きることは、辛いことばかりだと思うときに

『四苦八苦(しくはっく)の心』

またまたお釈迦(しゃか)さまの話で恐縮です。お釈迦さまは「人生は苦なり」と覚られました。二千五百年前のことです。「苦」とは世間一般に言う「苦しい」という意味ではありません。「苦」は自分の思うようにならない世界、自分の意志が届かない世界のことです。自分の親も兄弟姉妹も自分が望んで、自分の意志で選択して決めたのではありません。物心がついてフッと気づいてみたらそこに居た人達です。

自分の思いどおりにならないその最たるものが生老病死(しょうろうびょうし)なのでしょう。「生」は生れるですが、先に書きましたように親も生れる土地【国】も自分の意思の届かないところです。
「老」は老いる。おもしろいですね、生れて成人する位までは「成長する」と言い、それ以降は「老いる」と表現しますが、ずっと成長するではいけないでしょうか。それはそれとして、生れた時から老いに向っているのは確かなようです。年はとりたくないと叫んでも、どんなに上手に化粧をしても老いを止めることは不可能です。
「病」は病むことです。これもまた余程の例外でない限り病いを望む人はいないようです。厄祓いをしても加持祈祷(かじきとう)しても病むときは病むようです。良寛禅師(りょうかんぜんじ)でしたか、災難をまぬがれる方法を問われて「病むときは病むがよろし、死ぬときは死ぬがよろし」と応えられたと聞きます。病いも死も避ける方法はなさそうです。
「死」はそのまんま死。死は万人の逃れられぬところと知ってはおりますが、せめてこの児が成人するまでとか、孫が小学校へ入学すまでとか欲(ねが)うのが人情のようです。

以上が四苦(生・老・病・死)です。四苦八苦ですから後八苦ありそうですが、残り四苦しかなく、合せて八苦を四苦八苦と呼んでいるようです。
残り四苦の最初は「愛別離苦(あいべつりく)」ですが、愛しい人との別離のことです。生別であれ死別であれ人生にはさまざまの別れがあるようです。「さよならだけが人生だ」という言葉もある位です。私も十代の頃に多くの死別に遭遇しました。父も母も祖父も祖母もこの時期に物理的にはいなくなりました。
次は「怨憎会苦(おんぞうえく)」です。これは愛別離苦の逆パターンです。日常生活を考えると分かりますが、職場や近隣に何となく気の合わない、会えば不愉快になる人はいませんか?そんな人と毎日会う苦です。これが夫婦だったら最悪です。
残り四苦の三番目は、「求不得苦(ぐふとくく)」で字の如く、求めても手に入らない苦です。物だけでなく人望とか恋心もこちらの思うようにはいかないものです。
最後が「五陰盛苦(ごうんじょうく)」で元気すぎる苦なのだそうです。元気でどこが悪いと言いたくなりますが、血気盛んであることで、よからぬことに走ったりします。元気であることのマイナス面を指しているようです。

ここまで書くといかにも人生は辛いことばかりのようですが、実際はいかがでしょうか。生【いのちを頂く】が、なければ老死もないわけですし、出会いがあったから別れがあるのでしょう。いのちを頂いたからこそ四苦八苦が語れ、「あなたに出会えてよかった」と言えるところにいのちの輝きがあるようです。
「愛宕山(あたごやま) 入る日の如く あかあかと 燃し尽さん残れるいのち(西田幾多郎)」

平成18年冬季号より

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