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季刊誌「せおと」-fileNo.027-温故知新

fileNo.027温故知新

『温故知新』 朝5時25分集合・30分出発は「年寄りは朝が早い」にしても早い。11月13日、京都本願寺での親鸞聖人(しんらんしょうにん)750回大遠忌法要(だいおんきほうよう)への団体参拝出発であった。吹上のお寺から鹿児島空港、そこで伊集院のお寺と合流して総勢80名で本山着は11時頃となった。まず記念撮影、昼食と走りまわったが、広い境内は人でごった返している。説明によれば当日の参拝者は午前3500人、午後3700人とかで午前と午後の入替り時なのかもしれない。

本山を正面から望むと左が御影堂(ごえいどう)と呼ばれ、今回の法要の対象である親鸞聖人がまつられ、右側がご本尊の阿弥陀如来(あみだにょらい)が安置されている阿弥陀堂である。従って私達が参加する法要は左側の御影堂で午後2時からの開始であったが、3千人を超す多人数の為、本堂は仮設の部分も含めて人であふれ、肉眼では導師の姿も見えない。随所にテレビモニターが設置してあり、何となく有難味も半減という感じではある。私は法要の終了を待って住職の案内で隣りの阿弥陀堂へ急ぐ。というのも鹿児島を出発する2日前に分かったことであるが、これから行われる帰敬式(ききょうしき)【別名おかみそり・お釈迦さまの弟子になる儀式であり、法名を授かる】で同時に受式する3百余名を代表して新門【次期門主】さまの前で決意文を読むという役割(大役?)がまわってきて、そのリハーサルが待っていたのである。事前連絡の折、住職から練習用の決意文を手渡され一瞬「エッ!」との感じはあったが、これも何かのご縁と引き受けた。阿弥陀堂の入口に本山の担当者の方が待ち受けており、すぐ練習に入る。おかみそり【頭をまるめる儀式】の受け方、立ち上がるタイミング・位置、朗読と続き、一通り終わったところで「質問は?」と問われ「何とかなりそうです」と答えて手の震えに気づく。本番が始まる間亡くなった父の顔が浮かび【生前の父が50年前700回大遠忌の法要に参拝したことは、せおと28号・平成22年1月号に書かせて頂いた】その時の父はどんな思いでここに座ったのだろうかとか「力を貸してよ!」になったりした。結果は自分でも驚く程冷静に行動できたと思う【声が震えていたという説も無いことは無い】。ホテルに入って持参した焼酎で家内と秘かに祝盃をあげた。

翌14日は京都の北、比叡山延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ)から始まる。ここは天台宗の総本山で、かつて親鸞聖人も法然上人(ほうねんしょうにん)【親鸞聖人の師匠】も修行された山である。標高848mの山であるが、京都の街からは険しくて高い。今こそ頂上近くまで車で行けるが、親鸞聖人の時代はさぞかしと苦労が偲ばれる。その後角坊(すみのぼう)【聖人終えんの地】、六角堂(ろくかくどう)【聖人が比叡山から百日間通って参蘢(さんけい)され法然上人の弟子となることを決意された所】、大谷本廟(ほんびょう)【歴代門主の墓所・全国の門信徒も納骨される】を廻って、お参り三昧(ざんまい)の2日目終了となる。

11月15日の最終日は青蓮院(しょうれんいん)【親鸞聖人が9歳の時得度(とくど)された寺・最近ここの庭園がテレビコマーシャルに使われる】から崇泰院(そうたいいん)【大谷本廟以前の旧墓所】で終了となっていたが、隣りが浄土宗の総本山知恩院(ちおんいん)であり立寄る。その門前に法然上人800回大遠忌法要の大きな立看板があった。旅は無事に終わり夜7時半出発地にたどり着いた。

ここまで読み返すと親鸞・親鸞と書きまくり、えこひいきみたいな感じがする。しかし、親鸞の名は単に浄土真宗の宗祖としてだけではなく「善人なおもて往生をとぐ、いはんや悪人をや。」【歎異抄(たんにしょう)3章】の言葉【悪人正機説(あくにんしょうきせつ)】によって、中学・高校の社会・歴史の教科書にも登場する日本の宝である。【この言い方も門徒の「ひいきの引倒し」かなぁ!】。ここで言われる悪人は法律上の罪人の意味ではなく、他の生き物のいのちを奪わずに生きていけないと自覚する人のことである。生きていく人間の悲しさ辛さが身にしみて分かる人のことである。

父も50年前に参拝した京都西本願寺の境内に立って、改めて「いのち」は自分一代で完結できないようにできていて、駅伝のたすきのように自分の身で引き受けて、そして受け渡していくものなのだと思わせて頂いた。その「いのち」の受け渡しがぶれないために先達【親鸞聖人・法然上人等々】の教えが必要なのであろう。それにしてもいい国、いい親のもとに生れ合わせた、有り難い。


  『初空という  大いなるものの下』   あきら

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